救命救急センター(ER)は、交通事故による多発外傷や、突然の脳卒中、心筋梗塞など、一刻を争う事態に陥った患者さんを24時間365日いつでも受け入れる「最後の砦」です。他の病棟と大きく異なるのは、「次にどのような状態の患者さんが、いつ、何人運ばれてくるか全く予測できない」という圧倒的な不確実性です。
深夜の静まり返った時間帯であっても、救急隊からのホットライン(直通電話)が鳴れば、現場の空気は一瞬にしてトップギアに入ります。患者さんが到着するまでのわずか数分間で必要な医療資材や輸血を準備し、到着した瞬間にトリアージ(重症度判定)を行います。そこからは、複数のスタッフが同時に採血、ルート確保、エコー検査出しといった処置をハイスピードで展開します。言葉を交わさずとも互いの動きを予測して阿吽の呼吸で動く、医療チームの洗練された連携がそこにはあります。
そしてERにおいて忘れてはならないのが、突然の事態にパニックに陥っているご家族への対応です。つい数時間前まで元気だった家族が変わり果てた姿で運ばれてきたという現実は、ご家族の心を激しく打ち砕きます。現場のスタッフは、救命処置という極限のプレッシャーの中で手を動かしながらも、待合室で震えるご家族のもとへこまめに足を運び、状況を包み隠さず丁寧に伝え、その深いショックと悲しみを24時間体制で受け止めるという、極めて高度な感情労働を担っています。常に生と死が隣り合わせの緊迫した空間で、命を繋ぎ止めるための総力戦が日夜繰り広げられています。